診療理念
我々福島労災病院外科スタッフ(以下"私たち")は、
- 安心と信頼の得られる医療
- 患者さんを中心とした医療
- 相互信頼と責任分担によるチーム医療
を行うことを診療の理念とし、医療を行います。
「安心と信頼の得られる医療」を実践するために私たちは、
外科のプロフェッショナルとしての自覚を高め、外科的治療の実施においては安全を第一に考え、外科技術の修練に研鑽いたします。地域医療を担う中核病院の一員として、依頼された患者さんへの外科治療は断らない姿勢を貫き、先進医療にも積極的に取り組む努力をいたします。
また、臨床研修病院のスタッフとして、次代を担う外科医の教育にも熱意を注ぎ、外科手術を行うのみではなく、臨床現場の問題点を研究テーマとし、外科チーム一丸となって臨床研究を進めます。患者さんの病状は様々ですが、思いこみ医療や押しつけ医療をなくし、治療の標準化を図ることを目的にクリニカルパス(標準的診療計画書)を採用し、治療を受ける患者さんとともに治療計画を確認しながら診療を進めます。
「患者さんを中心とした医療」を実践するために私たちは、
診療に先立ち、その病名のみならず、病状や治療法、その結果などについてわかりやすく説明することを心がけ、治療を受ける側の同意のもとに治療法を選択してもらう姿勢を尊重します。治療法選択の際や治療経過のなかで生じた不安や質問には、できる限り迅速に対応するよう努力いたします。医療受ける側と視線の高さを同じくし、"自分の家族であったならば、自分が病気なったならば"という思いを胸に留め、その治療にあたりたいと考えています。
「相互信頼と責任分担によるチーム医療」を推進するために私たちは、
臨床の現場では、医師と看護師というチーム医療の最小単位の連携を重視し、その就業環境の改善に努力すると共に、医療を支えるコメディカルスタッフ(医師を除く医療スタッフ)との連携を密とし、入院から退院、そして更に在宅医療までもカバーする"患者中心の医療"を構築していく努力を怠らないように努めます。
更に、このチーム医療の精神を、病院と診療所、病院と病院、病院と施設という医療と福祉の組織間の関係へも発展させ、当院を取り囲む周辺地域の医療の中核にある責任を担いながら、患者さんのQOL(生活の質)を失わない効率の良い医療連携を推進してゆきたいと考えています。
診療対象
※当科の診療の中心は、消化器外科です。
- 消化器疾患全般の手術(※腹腔鏡を用いた手術や検査も実施しています)
消化器がん(食道がん、胃がん、大腸がん、肝がん、胆道がん、、膵がん など)
消化器良性疾患(胆石症、痔核、痔瘻、ヘルニア、体表皮下腫瘤など)
腹膜炎などの急性疾患(虫垂炎、胆嚢炎、消化管穿孔、腸閉塞など) - 胸部疾患の手術(※胸腔鏡を用いた手術や検査も実施しています)
肺がん
転移性肺腫瘍(他臓器のがんが、肺へ転移したもの)
気胸
胸腔鏡下肺組織生検
※特に原発性肺がんの手術では、福島県立医科大学医学部附属病院第一外科の、呼吸器外科グループの応援を得て診療にあたっています。 - 乳腺・甲状腺疾患(※ 各専門外来を開設しています)
乳がん・乳腺疾患
甲状腺腫瘍
※北福島医療センターと、福島県立医科大学医学部附属病院第二外科の応援を得て診療にあたっています。 - 末梢血管疾患
専門医は常勤しておりませんが、末梢血管疾患の初期医療についてのアドバイスなどを行い、専門病院への紹介の窓口としての役割を担わせていただいています。
※上記のがんに対する集学的かつ継続的医療の一環として、がん化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療、在宅医療および症状緩和ケアを行っています。
地域がん診療拠点病院の一員としての福島労災病院外科の姿勢
"がんの集学的医療(様々な知識や経験を集めて実践する医療)と継続的医療の実践"
がんに対して、手術や抗癌剤の治療を行うだけでなく、患者さんの年齢や社会的因子、体力などを十分に検討し、地域において可能な最善の治療法をアドバイスし、患者さんが自ら治療法を選択するための参考とさせて頂きます。
また、治療が病院のみに留まらず、家庭生活の中での継続性を保つため、在宅医療(往診)も行います。在宅医療の実施にあたっては、御家族の介護に要する人手、住宅環境、経済的支援状況、病院からの距離、社会福祉資源利用の可否など、在宅医療を受けることが患者さんや御家族の物心両面の負担とならない最善の方法を、メディカル・ソーシャルワーカーを交えて一緒に検討させていただきます。
抗がん剤治療は、薬剤師と看護師の協力のもと、できるだけ外来通院で行うことを基本とし、がんの治療中も自宅で過ごし、あるいは労災病院の掲げる"勤労者医療"の一環として、就業しながらのがん医療の継続を支援いたします。
化学療法(抗がん剤治療)を、点滴漏れなどの障害なく安全に行うために、太い血管内にカテーテルを留置し、皮下に埋め込んだ装置(V-port)を介して治療を行います。この方法では、治療中に食事が十分に摂れなくなったときには、容易に栄養や水分の補給のための点滴を行うことができます。抜針すれば入浴も可能で、通常のデスクワークなどの軽作業への就業が可能です。
先にも述べましたが、継続的医療実践の一環として在宅医療(往診)を行っていますが、医師単独での往診は避け、看護師を同伴し、病棟回診と同じように、外科チームとしての在宅往診(チーム往診)を試みています。
その中で、訪問看護室スタッフや、薬剤師、メディカル・ソーシャルワーカー、介護スタッフなどとの連絡を密に行い、訪問時間に配慮し、在宅で御家族と過ごされる時間を妨げない、社会性を大切に考えた往診を行うよう心がけております。
在宅医療は入院医療を拒むものではなく、病態変化や御家族の都合など、必要に応じて入院治療と在宅医療を織り交ぜて、治療中の患者さんのQOL(生活の質)を確保したいと考えています。
がんの集学的かつ継続的治療の一環として、治療が困難となったがん終末期の患者さんに対しては、手術療法や疼痛管理、輸液など、積極的ながん緩和医療を行っています。
がんのみならず、治療法などへのセカンドオピニオン(第3者的意見を述べること)としての立場も取らせていただきますので、がん及び外科的疾患に罹患してお困りの方がおいででしたら、お気軽に御相談下さい。
同じように、他院での治療を希望される場合には、転院に際して、当科で得られた検査や治療の成績は、紹介状に添えて提供いたしますので、気軽にスタッフに申し出て下さい。
学会施設認定
日本外科学会外科専門医制度修練施設(指定施設)
日本消化器外科学会専門医制度修練施設(認定施設)
呼吸器外科専門医合同委員会認定修練施設(関連施設)
専門医研修について
- 外科専門医研修(後期研修)について
- 消化器外科専門医研修について
※上記の「外科専門医」、「消化器外科専門医」の研修を希望される方、質問等のある方は、「お問い合わせ」フォームからお問い合わせ下さい。
<参考>
福島県立医科大学ホームページ http://www.fmu.ac.jp/
日本外科学会ホームページ http://www.jssoc.or.jp/
日本消化器外科学会ホームページ http://www.jsgs.or.jp/
臨床研究
- 研究テーマ:局所再発予防と神経温存によるQOL向上のための、直腸癌への術前照射
主任研究者:武藤 淳
研究期間:平成2年6月~ - 研究テーマ:直腸癌における術前照射の意義
主任研究者:武藤 淳
研究期間:平成5年度(労働福祉事業団外科共同研究「外科的大腸疾患をめぐる諸問題」) - 研究テーマ:当院における腹腔鏡下胆嚢摘出術の現況
主任研究者:武藤 淳
研究期間:平成6年度(労働福祉事業団外科共同研究「内視鏡外科手術の現況と問題点」) - 研究テーマ:腹腔鏡手術時の気腹操作と吊り上げ操作の術中術後の患者に及ぼす影響の検討
主任研究者:武藤 淳
研究期間:平成8年度(労働福祉事業団医学特別研究) - 研究テーマ:術後のQOLを考慮した直腸癌への術前照射
主任研究者:武藤 淳
研究期間:平成9年度(労働福祉事業団外科共同研究「直腸癌の治療とQOL」) - 研究テーマ:癌手術患者の術前・術後の精神的ストレスの評価
主任研究者:武藤 淳
研究期間:平成9年度(労働福祉事業団医学特別研究) - 研究テーマ:当科における食道癌手術成績
主任研究者:武藤 淳
研究期間:平成13年度(労働福祉事業団外科共同研究) - 研究テーマ:外科手術とクリニカルパス
主任研究者:武藤 淳
研究期間:平成13年4月~ - 研究テーマ:クリニカルパス導入による在院期間短縮の試みとその波及効果の検討
主任研究者:武藤 淳
研究期間:平成13年度(労働福祉事業団医学特別研究) - 研究テーマ:リングドレープ使用によるSSI予防の効果
主任研究者:宮澤正紹
研究期間:平成18年3月~ - 研究テーマ:胃全摘術周術期における経腸栄養の効果に関する研究
主任研究者:児山 香
研究期間:平成18年度(労働者健康安全機構病院機能向上研究) - 研究テーマ:胃切除後のSSIについて
主任研究者:宮澤正紹
研究期間:平成18年度(労働者健康安全機構病院機能向上研究・外科共同研究「術後感染症発症の現状と対策~DPC時代に向けて~」)